昼に高い電気料金
何が昼充電を妨げているのか【①昼に高い電気料金】
Tariff
電気料金の格差
電気自動車はガソリン車と比較して、一般に走行時のCO2排出量が半分程度だと言われています。
それでも少ないながらもCO2排出量があるのは、送配電ネットワークにある発電所には火力発電所の電気が一定程度含まれていて、火力発電分の電気も含めて充電するからです。
それであれば、送配電ネットワークにある電源群において再エネ発電所の割合が多ければ、CO2排出量は削減できることになります。
もちろん、送配電ネットワークから電力を買うのではなくて、自分が家の屋根などに太陽光パネルを設置して充電したり、一旦蓄電池に貯めておいて、そこから放電する電気で充電すれば、ゼロカーボン・ドライブ、つまり走行時の完全なゼロエミッションが達成される可能性があります。
実際、以下の記事にあるようにテスラは米国で、Drive on Sunshine‘「お日さまに照らされたドライブ」サービスの提供をすすめています。
私たちは、これを「お日さま充電」=Daytime Chargingと呼んでいて、送配電ネットワークの電気を使う場合でも、再エネ比率の高い時間(一般に昼間の時間)での充電の普及を呼び掛けています。
そして、その実現に向けて、スタートアップ8社でアライアンスを結成して積極的に活動を進めています。
ところが、日本において、昼充電をすすめるうえで、大きな問題が3つあります。
ひとつは、「昼間の電気料金が高くなるメニューがある」ということです。
複数の大手電力小売会社は時間帯別電気料金メニューを提供しています。
太陽光発電が稼働する昼に高くなり、火力発電比率が高まる夜に安いという、一般の感覚と逆の仕組みとなっていて、EVや蓄電池を保有する需要家の多くはこのメニューを選択して夜に充電しています。
下の図は、実在の電気料金メニューを修正したイメージです。
例えば、一日をデイタイム(昼間)、ナイトタイム(夜間)、リビング・ホームタイム(在宅時間)の3つの時間帯に分けて、それぞれ毎に異なる電力量料金単価(1kWh当たりの価格)を適用します。
例えば、午後10時から翌朝の午前8時が17円、朝のお出かけ準備時間の午前8時から10時が29円、日中不在の多い午前10時から午後5時が39円と夜間の2倍以上となり、帰宅時間の午後5時から午後10時が29円となります。(注:価格は実在する料金メニューを修正しているイメージです)
もちろん、消費者にとっては、電気料金はなるべく安い方がよいので、夜の17円の電気料金を値上げすべきと言っているのではありません。
そうではなくて、再エネ比率が高くなって、再エネ電源は限界費用がほぼゼロなので、調達コストは一般に安くなることがあるので、それなのに夜の2倍近い高値となっていることで、せっかく「昼充電をしてもよいか」と思ってくれるかもしれない消費者の行動にバツを与えてしまっているという懸念です。
実際に、九州地方を中心に昼間の太陽光発電の出力を停止するような状況が発生しています。
だとすれば、「バーゲン価格」のように、その時間だけ格安で充電できるような仕組みが導入できれば、発電者も送配電システム管理者も電力小売会社も消費者もハッピー・ハッピーなシナリオになり得ます。
このような状況に至った背景や、電力小売会社が抱えるジレンマなどについては、また触れさせていただきますが、今こそ、関係各者が連携して、シームレスな解決策を考える時にきているのではないでしょうか。