送配電網の脱炭素化に向けて
時代はRE3.0へ

【RE3.0-再エネ3.0➁】需給が相互に追従するという考え方

RE3.0

電力消費と再エネ発電がお互いにフォローし合うという考え方

前回の記事で、私たち電力シェアリングは、独自の考え方で、電力システムの脱炭素化は以下の4段階を経て進行し、今は再エネ3.0を迎えていて、この段階に適切な政策・規制の導入が必要だと問題提起を致しました。

【RE3.0-再エネ3.0】送配電網の脱炭素化に向け、次の段階へ

時代は再エネ3.0-RE3.0へ

再エネ3.0-RE3.0時代を迎えている中で、私たちは、電力システムの一層の再エネ発電の導入を進めていく必要があります。一部の地域では、日中に潤沢に発電される太陽光発電を出力停止しなければいけないという、もったいない状況が生れています。一方で、ウクライナ情勢の中でエネルギー危機という状況にあり、電気料金の高騰を抑えていくことも重要な視点です。また、天候に左右される再エネ発電をバックアックする手段を十全に整備しておかなければ、大きな停電を引きおこしたり、それを防ぐために過剰な設備投資を行い、それがさらに電気料金を引き上げてしまうというジレンマに陥りかねません。

それでは、再エネ3.0-RE3.0時代に、送配電システムにつながっている全ての電源の脱炭素化に向けて一層の高みを目指し、私たちはどう立ち向かえばよいのでしょうか。その解決策はたった一つです。

それは、再エネなどの脱炭素発電をする時間に電力を消費すること、そして電力が多く消費される時間に再エネ発電を行う(あるいは蓄電池などから放電する)ことです。以下のようなイメージです。

やや堅苦しく言えば、「需要と供給の相互追従」です。それって一体どういうことなのでしょうか。需要と供給に分けて考えてみたいと思います。

需要の再エネ供給への追従

電力を消費するとCO2が排出されます。それは以下の式で表されます。

 

電力消費に伴うCO2排出量(kG-CO2)は、ある消費者(電力需要家と呼びます)の消費電力量(kWh)と各需要家のCO2排出係数(炭素強度・あるいは炭素濃度)(kG-CO2/kWh)の積で求められます。

各需要家のCO2排出係数とは、「炭素の濃度」と考えてみても良いでしょう。エアコン(1kW)を1分使うとしましょう。リモコンのスイッチを午後2時にオンにして、午後2時1分にオフにます。これを、水道水に置き換えて考えてみましょう。

午後2時に水道の蛇口をひねって、ばけつに水をいれます。1分後に蛇口を止めます。その時に、バケツには1リットルの水が入っています。そこに炭素の黒い粒が600粒入っていたとします。水1リットルに入っている炭素の粒の量が炭素の濃度と考えます。

電力は一般に貯められないので、電力消費によるCO2排出係数は、消費している時間帯の電源構成に大きく左右されます。例えば、太陽光の多い昼間の時間帯には係数は300g-CO2/kWhとなり、火力発電が多い夜の時間帯には、600g-CO2/kWhになったりします。

蛇口の例では、昼に蛇口をひねってばけつにそそぐ水1リットルには300の黒い炭素の粒が入っているのに対し、夜には600の粒が入っていて、炭素の濃度が濃くて、水が真っ黒になっています。

ですので、全体のCO2排出量は、例えば1日に1時間毎に、電力を1kWhづつ、24時間で24kWh使った場合、(バケツの水1リットルを浴槽に24回注いで24リットルになった水に)含まれている炭素の量は、各時間毎にことなるCO2の量を足し上げることで求めることができます。

反対に言えば、1日全体のCO2の量(浴槽の黒い粒の数量)を、1日全体の消費電力量で割ることで、その消費者ごとにある期間固有の、CO2排出係数(炭素濃度)が計算できます。

当然、同じ10kWhを消費する(10杯のバケツの水を浴槽に入れる)場合でも、夜の排出係数が多い場合と、昼の低い場合では、消費電力あたりのCO2排出量(浴槽の水の黒い粒の濃度)は大きく異なります。

従って、この算式を用いれば、電気(水)の使用量を減らすことと同時に、個人毎にスコアリングされるCO2濃度を減らすことの掛け合わせでCO2排出量が削減されることがお判りいただけると思います。

では、どうやってCO2濃度を減らせばよいのでしょうか?それは、再エネ比率の高い時間帯に電力消費をタイムシフトすることです。

 

言うは易しで、実際は全く簡単ではないですが、例えばタイマーなどを使って洗濯機を昼に利用するといったちょっとした心がけが重要になります。

私たちは、「個人毎の炭素濃度」をスコアリングして、消費者にお示しし、炭素濃度と消費量の合わせ技でCO2排出削減を促す手法を発明しました。是非この手法で、消費者に合理的に、納得のいく形で「節電」を進めていただけるよう、ナッジなどの行動インサイトを活用した施策を講じていければと考えています。