再エネの供給制約をめぐる
2つの考え方

再エネ社会:制約を受け入れるか?超克するか?

RE A or B?

再エネを巡る2つの考え方

化石燃料中心から再生可能エネルギー中心への社会・経済構造の転換にあたっては異なる2つの大きな思想の違いがあると私たちは考えています。

それは、自然エネルギー特有の制約条件を超克していくという発想(これをシナリオAとします)と、その制約をあるがまま受け入れていく発想(シナリオBとします)です。

テスラを率いるイーロンマスク氏の発想は明らかにAです。米国のテスラショールームには、「シームレスなユーザー体験。朝起きたら再エネ満タンになっています。快適なEVライフをお過ごしください」という趣旨のスローガンが掲げられています。

 

EVの普及に当たっては、ガソリン車に比べて充電のコストと手間がかかることが大きな課題であるというのが一般的な認識でしょう。

テスラは、顧客にストレスを感じさせなく、100%CO2フリーの電気でフル充電されたEVを提供するという発想です。

これは、いつ発電されるかはお天気次第で、しかも太陽光発電は昼間にしか発電できないという制約を、蓄電池を大量に普及させて解決し、さらにEV充電も併せて解決するという2重の課題を克服するという技術革新を目指していくものです。

最初は、コストがかかるが、テクノロジーと量産化によって、リーズナブルな価格で提供して、さらなる経済成長と社会の発展を希求します。

一方で、大量に生産し、輸送し、消費するというたゆまない市場規模の拡大を目指す思考に、一定の留保をつけて、(あるいは成長そのものを否定する「脱成長」的な思考に基づいて)、自然の制約条件を受け入れて、自然に合わせて生活をするという我慢をしていくことが大事であるというのがシナリオBです。

もちろんこういった極端な二項対立をする必要はありませんが、グローバル経済の転換による生産性向上の停滞や少子高齢化によるGDPの伸び悩みのなかで、例えばIT革命・AI革命によるさらなる生産性の向上や、メタバースや宇宙といった新しいフロンティアを開拓してさらに市場を拡張させることを是とするA的な発想と、GDPという金銭的尺度を用いないで、生活の質の向上や豊かな生活を目指すB的な発想の1つの出現形態といっても良いかもしれません。